肩関節の考察②
昔の人の肩は〇〇だった?肩の進化に隠された驚きの秘密
突然ですが、私たちの「肩」が、遠い昔、一体どんな形をしていたかご存知でしょうか?
「肩が凝る」「五十肩」といった現代人の悩みとは無縁そうにも思える昔の人の肩。実は、私たちの肩は、太古の生命の神秘的な進化の物語を秘めているのです。今回は、魚のヒレから始まり、恐竜の時代を経て、二足歩行をする人類の肩がどのように現在の形になったのか、その驚きの秘密を紐解いていきましょう!
始まりは「魚のヒレ」だった?!太古の昔に隠されたルーツ
遥か昔、私たちの肩の原型は、なんと魚の横のヒレから発達した、という学説がGEGENBAUER氏(1878年)によって提唱されています。つまり、現在の私たちの肩は、魚から始まっているのです。それ以前の動物には、肩と呼べる部位は存在しなかったと考えられています。
この事実だけでも驚きですが、その後、肩は様々な動物の進化とともに、その形と機能を大きく変えていきます。
恐竜時代:機能は未分化から球関節へ
約1億5千万年前のジュラ紀後期に生息した**剣竜(ステゴサウルスの仲間)**の肩関節は、まだ蝶番関節の域を出ておらず、まるで「前輪駆動の車」のように移動していたと想像されています。この頃の肩は、機能的にはまだ未分化だったと言えるでしょう。
しかし、約1千万年ほど時代が下った草食恐竜のマメンチサウルスでは、巨大な上体を支える必要からか、肩甲骨は棒状のままでありながらも、肩関節はしっかりとした球関節へと変化しています。
さらに、約1万5千万年前の**オオナマケモノ(エレモテリウム)**は、水辺で草食をするために首を長くし、肩甲骨は扁平化して胸郭にしっかり張り付き、**前肢に巧緻性(こうちせい)**を持たせていました。これは、現在の哺乳動物に近い肩の形態へと変化していることを示唆しています。
中には、少し退化した例もあります。白亜紀後期(約7千7百万年前)のハドロサウルスの前肢はやや矮小化しており、約6千5百万年前のいわきクジラの肩甲帯は、水中での抵抗を少なくするために退化・消失し、扁平な「櫂(かい)」のような形になっています。これは、現在のゴンドウクジラもほとんど同じ形状をしており、彼らの生態が変わっていないことを示しているのです。
哺乳類時代:巧緻性とスピードへの適応
恐竜が姿を消し、哺乳類の時代になると、肩はさらに多様な進化を遂げます。
約1万年前に絶滅したと言われる**スミロドン(サーベルタイガーの仲間)**は、ライオンのように超スピードで疾走する能力を持っていたと考えられています。その秘密は、肩甲棘(けんこうきょく)が軍配(ぐんばい)のように肩甲キ(肩甲骨のくぼみ)を二分し、強力な棘上筋(きょくじょうきん)と棘下筋(きょくかきん)の機能が均等に作用する特異的な構造を持っていたためだとされています。
原始猿の肩甲棘も二等辺三角形の中央に位置しており、これは上肢の巧緻機能が増してきていることを物語っています。私たちの身近な動物であるタイ鹿の肩甲棘はやや上方に移動し、熊の肩甲棘は人類のものに酷似しているとされています。
人類:二足歩行がもたらした「精密機械」としての肩
そして、人類の肩の進化における大きな転換点となったのが、二足歩行です。
チンパンジーの肩は、起立する生活習慣を始めたためか、人間の肩とほとんど同じであると言われています。しかし、私たち人間では、さらに上腕骨と体幹骨の関係が90度軸を変え、**上腕骨骨頭の後捻(こうねん)**が起きるなど、起立生活に適応するための顕著な形態変化を遂げました。
約2億年という壮大な地質学的歳月を経て、現在の私たちの肩は形成されたのです。かつて、移動のために股関節とともに使われていた上肢は、その役割を放棄し、より精密な作業に従事するようになりました。
私たちは普段、時計やカメラなどの精密機械の精巧さに驚かされますが、実は肩の精巧さは、その比ではないと言われています。特に、腕を上げたり回したりする際の骨や筋肉の「協調的な運動のリズム」は、まさに感嘆に値するほどです。上肢が躯幹に占める割合はわずか13%と、下肢の37%に比べて3分の1に過ぎないにも関わらず、その精密な運動性は何倍も要求されているのです。
まとめ:あなたの肩は奇跡の産物!
いかがでしたでしょうか?
私たちの「肩」は、単なる体の部位ではなく、太古の魚のヒレから始まり、様々な動物の進化を経て、人類の二足歩行という画期的な変化によって、現在の**精密な「複合体」**へと姿を変えてきました。
一見すると「肩が凝る」とか「五十肩」といった身近な悩みと結びつかない壮大な物語ですが、この進化の過程こそが、私たちが腕を自由に動かし、日常生活のあらゆる動作を可能にする、奇跡的なメカニズムを生み出しているのです。
あなたの肩もまた、気の遠くなるような時間の旅を経て、現在の姿になった奇跡の産物です。次回以降も、そんな奥深い「肩」の秘密をさらに紐解いていきますので、どうぞお楽しみに!
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